天体写真を撮る大学院生のブログ

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星野写真 画像処理

The Deep Sky Around the Winter Diamond

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The Deep Sky Around the Winter Diamond
F2.8, 180s*20*4panel(total 240min), ISO1600
Nikon D810A, Sigma 40mm F1.4 DG HSM|Art, Unitec SWAT-350
2019/11/1 日光戦場ヶ原
冬のダイヤモンド付近の領域を焦点距離40mmのレンズを使った縦横2×2の4枚モザイクで撮影した広角星野写真です。

画像のオリジナルサイズの解像度は8886×12248で一億画素超あります。

Twitterに載せたのは投稿用に解像度落としてシャープネスを調整した画像だったのでオリジナルサイズをAstrobinとFlickrに投稿しました。

The Deep Sky Around the Winter Hexagon (Nakaki) - Astrobin

The Deep Sky Around the Winter Diamond | nakaki | Flickr

1フレームあたりの露光時間は60分なのでそんなに長くはないですが、モザイクして微光星が小さくなったおかげで大きく広がる分子雲の構造を描出できたかなと思います。

大きく広がる分子雲によって無限遠の天体に立体感が生まれ、宇宙のダイナミックな構造が視覚的にすんなり頭に入ってくるのがいいですね。

これこそが広角星野の醍醐味かなと僕は感じています。

昨年の抱負に書いた、
ですが、この『目新しい冬の天の川の広角星野表現』というのが、分子雲の構造を使った冬の天の川の立体的な描写でした。

冬の天の川からヒアデス星団やオリオン座の方向に分子雲が流れているのはわかっていたのでこれらの分子雲を描出することで冬の天の川に立体感を生むことができると考えました。

今回の写真である程度コンセプトは実現できたかなと思いますが、40mm Artで4枚モザイクをしてやっとって感じです。

オリオン座の左のあたりの分子雲なんかはまだまだS/Nが低く構造がはっきりとは出ていないのでさらに露光時間を伸ばして分子雲のS/Nをあげればもっと改善するんじゃないかと思ってます。

今後もこの表現を追求していきたいですね。

レムナントみたいな極淡な対象は出せませんでしたがこれは一長一短かなと思います。


今回初めて4枚のモザイク合成に挑戦して、大小4点くらいの知見が得られたので覚書程度に書いていこうと思います。

まず1つ目は、オリジナルサイズの画像を最終的な観賞サイズにまで縮小表示するとノイズはあまり目立たなくなるということです。

例えばおうし座の分子雲あたりは1時間の露光にしては結構無理やり炙り出したので、単体で見ると結構ザラザラしているのですが、モザイク合成してみると縮小によってザラザラが均されて(?)目立たなくなってます。

私は普段はディスプレイで観賞がメインで、大きく印刷するときでもせいぜいA3くらいなので、モザイク前提なら露光時間を削ったり今までよりもうちょっと攻めた処理をしてもいいなと思いました。

ただ、いくらモザイクをしてもノイズが気にならなくなるだけで、今回のレムナントのようなそもそもシグナルがない対象が浮かび上がってくることはないのでそれと混同しないようにしないといけないです。

次に2つ目は、先に合成してから強調するよりもそれぞれ強調した後に合成した方がいい結果が得られやすいということです。

理由は強調前だと細かいカラーバランスの違いや境界の被りを見逃してしまうからです。

僕はモザイク合成をMicrosoft Image Composite Editor(ICE)というフリーソフトで行っていて、このソフトは多少のカラーバランスや被りのズレを自動で補正してくれるので非常に便利なのですが、合成してから強調すると微妙に残ったカラーバランスのズレが大きく出てきてしまいました。

強調前にどれだけ慎重にカラーバランスを調整しても強調していくにつれ崩れていくのは(今の僕の技術では)どうしようもないのですが、ICEはフレーム間を違和感なくなじませるために境界が直線ではなくギザギザしているのでそれを強調後にフレーム個別で調整できないのがつらいです。

ICEではなくPhotoshopのモザイク合成機能等を使うという手段もありますが、先述の通り、フレームの境界の違和感を取り除く合成に関してはICEは非常に優秀なのでできればICEを使いたいというのが今の僕のスタンスです。

今回は、

各フレームを通常の7割くらいで強調

ICEでモザイク合成

合成後の画像を通常の5割くらいで強調

くらいの加減でやりました。

次に3つ目ですが、これは2つ目の続きとも言えますが、ある程度処理が進んでから合成するので、自分の写真の安定性の向上に繋がるということです。

これまで僕は写真ごとに雰囲気がだいぶ変わるなと思っていて、自分のスタイルに一貫性がないというか自分の個性をあまり掴めずにいたのですが、モザイクをすることでそのフレーム間では意識的に同じような仕上がりにする必要が出てくるので、安定して同じような画像に仕上げる技術が養われるかなと思います。

その意味でも今後もちょくちょくモザイク合成をやっていきたいなと感じました。

最後に4つ目ですが、これは今回の写真に限ったことですが、冬のダイヤモンドを4枚モザイクするとオリオン座付近の一番目がいく部分がフレームの境界になるのでつなぎ目の違和感によりシビアになるということです。

ICEがほとんどきれいに合成してくれますが、ここだけは目が肥えているせいか違和感が結構あったので、ちょこちょこ調整しました。

他の境界でもよく見るとちょくちょく気になる部分はありますがご愛嬌ということでお願いします。

やはり新しいことをやるといろいろな発見がたくさんあって楽しいですね。その分悩むことも多いですが。

そういえば写真のタイトルを決めるときに調べて知ったのですが海外では『冬のダイヤモンド(Winter Diamond)』という呼称はあまり使われないみたいですね。Winter HexagonやWinter Circleと言うのが一般的みたいです。

そのためAstrobinのタイトルはWinter Hexagonにしました。

将来的に長焦点での撮影を始めた時にクローズアップして撮影した星雲をこの写真に嵌め込んでいくのが今から楽しみです。

それでは。

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