天体写真を撮る大学院生のブログ

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SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Artへの期待

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こんにちは。

いきなりですが新しいレンズが増えました。

最近発売されたばかりのSIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art。僕にとっては初めてのArtレンズです。

スペック等はSIGMAの公式ページを見ていただきたいのですが、もともとシネレンズとして設計されただけあって非常に高性能なレンズになっているみたいです。

ところで、僕はこれまでAF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gというレンズで3年弱、星野写真を撮ってきました。

そこで、これまで使ってきたNIKKOR 50mmと比較して、SIGMA 40mmに期待できることを考えてみようと思います。

なお、まだ全く使ってないのでレビュー記事ではありません。あくまで推測です。

40mmという画角

まずは画角についてです。

標準域の焦点距離における10mmというのは画角に結構な差があります。

僕はこれまで50mmの画角で撮ってきましたが、実はもうちょっと広く写せたらなぁと感じることが度々あり、そのようなときはモザイク合成をして写野を広げる手法を用いていました。

Milkyway Near Sgr

こちらの写真や、

CygCep

こちらの写真は2枚モザイク合成をしており、結果としておおよそ40mm程度の画角になっているかと思います。

このように、50mmで足りない画角をモザイクで撮っていた僕にとって、40mmというのはまさに絶妙な焦点距離であるわけです。

また、一般的な話としても、標準域の星野写真は1つ1つの星雲が小さいのでできるだけ多くの星雲を1枚の写真に収めたいという欲求と、写野を広げると被り補正に苦労するというデメリットの間での葛藤の、ちょうどバランスの良いところをいってるような気がします。

撮影絞り値と周辺画質

Near Antares

NIKKOR 50mm f/1.8Gでは、星野写真を撮るときは基本的にF4.0まで絞って使っていました。F4.0で撮影したときの周辺星像が以下になります。

FlatAideProの等倍星像チャート画像作成機能を利用

正直F4.0まで絞っても周辺はだいぶ厳しいのがわかるかと思います。これを強調していくと、

このように中心部と周辺部で像の平坦性がどんどん失われていってしまいます。

さらに絞ることで周辺画質は改善するかもしれませんが、天体写真において開放F1.8のレンズをF4.0よりも絞るというのはなかなか勇気がいることです。なぜならF1.8→F4.0とするとセンサーに届く天体からの光が1/4以下になってしまうからです。それだけ星雲の階調はザラザラになりますし、暗い星雲はそもそもノイズの中に消えてしまいます。

せっかく開放F値の小さい明るいレンズを使うのであれば、できるだけ絞らずに使いたい…でも周辺画質が…といったようにこちらも葛藤を抱えるわけです。

ちなみに、先程の画角の話でモザイク合成をするという話をしましたが、モザイク合成には周辺部の画質の悪い部分をカットして画質の良い中心部のみ使えるというメリットもあります。1枚目の射手座付近の天の川なんかはまさにそれが上手くはまった1枚だと思います。

このように、NIKKOR 50mmではF4.0まで絞ってもなお周辺画質は満足のいくものではなく、モザイク合成で良像部分のみ使うことで対処してきました。

それに対してSIGMA 40mmですが、Unitecさんのレビューがとても参考になります。


特筆すべきは開放の四隅の星像で、F1.4でここまでシャープなレンズはこれまで見たことないレベルです。中心星像は一段絞るとキュッと引き締まり、文句のつけようがないほどシャープ。 F2.0とF2.8では、星像にほとんど変化はなく、周辺減光の違いで絞りを選ぶ感じです。色収差や非点収差、歪曲収差などもまったく気にならないレベルで恐ろしいほどの性能です。

シグマ 40mm F1.4 ART レビュー。 - SWAT

レビュー内でも述べられているように、F2.0からすでに周辺星像がかなり良さそうな感じがします。周辺減光はありますがそれもF2.8まで絞れば問題ないレベル(画像処理で比較的容易に補正が可能なレベル)まで改善するという。。

ちょっと信じられないくらいの性能みたいなんですよね。

これによってこれまでのNIKKOR 50mmでの撮影と比べて具体的にどれくらい変わるのか、考えてみました。

まずNIKKOR 50mmですが、F値はF4.0、2枚モザイク合成を前提とするので1領域あたりの露光時間は1/2になります。

一方SIGMA 40mmはF値はF2.8、周辺画質は十分なのでモザイクの必要なし。

つまりSIGMA 40mmはF値において光量2倍のアドバンテージ、さらに露光時間においても2倍のアドバンテージがあり、単純計算で合計4倍のシグナルをセンサーに送ることができるわけです。

4倍っていうと2時間露光が8時間露光に変わるようなものなのでそれはもう画質に対して顕著に効果が現れるんじゃないかなぁと。

とてもワクワクしています。

色収差

最後に、色収差についてです。

NIKKOR 50mmでは以下のようなちょっと変わった傾向の軸上色収差が現れます。

わかりやすいように彩度強調していますが、画像の中心付近は強いピンク色となり、その外側は今度は緑色に向かいます。

中心付近は構図的にも赤い星雲が存在しがちなので、ピンクの色収差を補正すると赤い星雲の色まで消えてしまったり、そもそも色収差なのか星雲の色なのか区別ができないこともよくあります。

それに対してのSIGMA 40mmですが、また同じくUnitecさんのブログを参考にすると、NIKKOR 50mmのような風変わりな色収差は出ないみたいです。

ただ、星像周りの色収差がどれだけ出るのかは自分で撮って普段と同じように強調してみないとわからないので、今後確かめたいと思います。

まとめ

初めてのArtレンズということで、楽しみな気持ちが抑えきれずただの期待だけでここまで書いてしまいました。

上で述べた周辺星像や色収差の特性については、"画像の均質性"とまとめてもいいかもしれません。画像の均質性を乱す要因は、写真を見た人の印象に強く働きかけ、本当に表現したい対象の邪魔をしてしまいます。

SIGMA 40mmは、まさにありのままの宇宙をコピーする星野スキャナーのような写りに期待したいと思います!

でもNIKKOR 50mmもいいレンズだよ!

最後に、ここまでNIKKOR 50mmとSIGMA 40mmを比較してきてNIKKOR 50mmの不満点ばっかり挙げてしまいました。ですが決してNIKKOR 50mmが良くないレンズだと言いたいわけではありません。

まず、AF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gはいわゆる撒き餌単焦点と呼ばれ、新品でも3万円弱で手に入れることができるおそらく最安価な単焦点レンズです。

そして、先ほど不満点として挙げた周辺星像や色収差は、星野写真の中でも下の写真のような分子雲を背景宇宙からあぶり出すような作風を目指して強烈な強調をした際に初めて目立ってくるものです。

Near M45,NGC1499

僕自身、3年前に安いからとりあえず買って、星撮ってみたら写真で見たことある星雲が写ってて、そこから星野写真にどっぷり浸かっていった経緯があります。

M31, h-χ

その頃は収差のことなんて全然気にならなくて、2万円のレンズなのにすごいしっかり写って最高!って感じで撮ってました。

その後、だんだん画像処理が上達して強い強調ができるようになってくると前述の問題を感じるようになるのですが、それらの問題を解決しようと試行錯誤したおかげで撮影や画像処理における様々なテクニックを身につけることができました。

なので、これから標準的な焦点距離で星野写真を撮りたい!という方がまずは安価に機材を揃えて始める際には是非おすすめしたいレンズです。

きっと撮影者を成長させてくれますし、不満を感じ始めた頃にはいい具合にお金が貯まっているかも(?)しれません。笑

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